インフルエンザ新薬にみる塩野義製薬の戦略

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毎年この時期恒例ですが、今シーズンは特にインフルエンザが大流行しております。実は今流行しているインフルには大多数が掛かるA型にH1とH3の2種類と少数派のB型の1種類があります(つまり合計3種類)。

どれかに一度掛かっても他のタイプの抗体はできないので、A型に2度掛かる人が続出しているそうです。「一度掛かったから大丈夫」と思って予防措置を執らないのは大きな勘違いなのです。

特に昨年米国で大流行したA型のH3(香港型)は感染力も特に強く、予防接種を受けたからといって8割方は効果がなく、一旦発症すると相当な高熱を出してしまい、仕事にならないそうです。

子供さんだと熱にやられて異常行動を起こし、中には高層マンションから飛び降りようとしたケースもあるそうです。怖いですね。

一方、今シーズンから登場した塩野義製薬の「ゾフルーザ」という抗インフル剤は一度服用するだけで一晩で治るほど強力らしいです(でもウイルスは体内に残っているのですぐには出社しないほうがいいですよ!)。頼もしい味方が現れましたね。今後、タミフルなどからの切り替えが急速に進むでしょう。

この塩野義製薬、業界では際立ってユニークな存在です。最近では武田薬品がシャイアーを巨額買収して評判になったように、製薬業界では巨額に上る開発費を賄うためにメガファーマ化が進んでいます(ちょうどクルマ業界と同様です)。

でも塩野義製薬はそうした動きに背を向け、開発体制を見直して効率化し、他社の数倍の速さと確率で矢継ぎ早といってよいペースで新薬の開発・商品化に成功しているのです。しかも他社が我先に抗がん剤に殺到しているのに対し、感染症に特化しています。

実は感染症の薬は、以前には「儲からない薬」の代名詞でした。なぜなら先進国では感染症がどんどん減り、患者の大半は貧乏な発展途上国の住民ばかりだったからです。

でもグローバル化の進展で事情は一変し、先進国にも発展途上国から新たな感染症が拡がり(エボラ出血熱やデング熱が典型)、もしくは一旦退治されかかった感染症が再上陸する事態が相次いでいるのです(日本での風疹などが典型)。

つまりこの会社は、自社が得意で、他社と違う領域に戦略的にフォーカスしている、見事な「フォーカス戦略」を発揮している数少ない日本の製薬会社だということです。

この戦略を率いているのが同社の手代木社長で、その手腕は「手代木マジック」とまで称賛されています。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO21417410S7A920C1X11000/ でもいくらよい薬が出てきたからといって、インフルエンザに掛かってしまうと大変です。仕事になりませんから。とにかく皆さん、体調管理には気をつけてください。手洗いと喉のケア(口ゆすぎ、うがい、喉の潤いを保つこと)が絶対必要ですよ!